Interview Flute 上畠由梨乃

   現役の音楽大学生や一般大学生、そして高校生、大学を卒業した社会人まで幅広い人が所属するVariOrchestra。異なる環境で学んできた団員たちは、それぞれどんなことを考えながらVariOrchestraで演奏をしているのだろうか。そんな音楽に関する“おしゃべり”に近いような形でお届けしていく企画にしたいと思います。

Flute  上畠 由梨乃

(c)Ayane Shindo

──今回、ソリストとしての参加を提案させてもらった時に、選曲の大枠は事務局が決めましたが、モーツァルトのどちらの作品をやるかは上畠さんに選んでもらいましたね。

「第1番はやっぱりコンクールや試験での演奏機会が多くて、ピアノ伴奏ではやったことが多かったけれど、オーケストラとはやったことがなかったので、こちらを選びました。第2番は以前にオーケストラとやらせていただいたことがあったので、やったことのない方をぜひやりたいなと」

──この曲は、コンクールや入学試験などの課題曲によく登場しますよね。私もたくさん演奏しました。試験やコンクールで演奏してきた作品を演奏会でやるとなって、心持ちや準備に違いはありましたか?

「コンクールの準備の時に『コンクール』を意識しないから、大きな意識の隔たりはありません。けれども緊張の種類が違うから、練習での意識は変えているかも。私はすごくあがり症で、コンクールなどの大きな舞台ではもちろん、学内の小さな演奏会や試験でも緊張します。でもそれぞれの本番で緊張の種類が少しずつ違うので、練習の時に自分にかけるプレッシャーの種類を変えています。例えば、コンクールでは自分を追い込むようなプレッシャーをかけるけど、演奏会ではそういう緊張はないから、圧をかける練習はしないですね」

──緊張の種類を分析することで緩和される部分もありそうですね。オーケストラ伴奏での演奏ということでは何か変えたりしましたか?

「特別に意識したことといえば、自分の中の拍感、拍子感を考え直したくらいです。ピアノとやるときは2人で合わせれば良いし、特にこの曲は4拍子でテンポ変化もあまりない曲だから、こちらが意識しなくてもピアニストが合わせてくれることが多いと思うんです。でも大勢のオケ奏者と合わせるとなると、何となくの拍感ではできないと思いました」

──しかもバリオケでは、指揮者を頼りにするわけにもいかないですしね。

「そうですね、でも指揮なしのための準備はしていません。ピアノとやる時に、オケだったら何の楽器が演奏しているのかを楽譜に書いていたから、どこでどんな音が鳴るのかはある程度頭に入っていたので。だから今回指揮なしのオケだからということでは、すごく特別な意識はないかもしれません」

──後半は、オーケストラ奏者としてシューベルトの第5番にも参加しますね。ソリストとオケ中奏者として演奏する時とで、どのような変化をつけていますか?

「大きく変えてるのは、ビブラートです。ソロの時はまず音量が必要だから、上の響きを多めにして、ビブラートを深く細かくかける。逆にオケ中でそういう演奏をしてしまうと浮いてしまうから、ビブラートをかけすぎないことや、周りに馴染ませることを意識しています」

──オーケストラの一員として演奏するのか、そのオーケストラを率いて演奏するのか。今回の演奏会では、上畠さんの両方の側面を見ることができるので楽しみにしています。今日はありがとうございました!

取材:神谷 咲妃

【Profile】
滋賀県出身。第71回全日本学生音楽コンクールフルート部門高校の部全国大会第1位。第23回びわ湖国際フルートコンクールジュニア部門第1位。第16回仙台フルートコンクール一般部門第3位。第25回びわ湖国際フルートコンクール一般部門第1位。平成29年度 一般財団法人 東京私立中学高等学校協会賞受賞。令和元年度 大津市文化奨励賞受賞。その他、国内コンクールにて入賞多数。これまでに、フルートを大友太郎、高橋聖純、菅井春恵、神田寛明、下払桐子、野原千代の各氏に師事。G・マシャエキ=ベア、M・ラリュー、R・グライス=アルミン各氏等のマスタークラスを受講し研鑽を積む。国立音楽大学附属高等学校を首席で卒業。同時に「東京都知事賞」を受賞。現在、特別給費奨学生として同大学4年次に在学中。

第2回定期演奏会「指揮なし」

経験豊富なソリストによる珠玉の交響曲と緻密なアンサンブルによる交響曲  VariOrchestraが1年ぶりに再始動します!第2回的演奏会は、初回公演に参加した2人の独奏による…